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山本弘「詩羽のいる街」

てっきりSFかと思いきや、ミステリとも違う…わりと正統派の小説。
「詩羽(しいは)」を中心とした連作集。
自称“触媒”役として、町の人々の関係を取り持ち、物々交換や情報交換で生計を立てている詩羽。
現金でのやりとりは一切せず、ただ「合理性」を信じて行動する詩羽の姿に、人々は少しずつ影響されていく。
これがただの天然キャラというか、人を疑うことを知らない天使のような少女だったりしたら、それだけでもシラけてしまうところだが、何やら深い過去のありそうな感じにしてあるのがうまい。
それから、人の良心とか、そういう「性善説」的なものに頼るのではなく、合理性を前面に押し出しているのもいい。
下手すればただの感動的はオハナシになってしまうところを、現実に近いところにとどめている。
これ、詩羽を主人公にいくらでも話が続けられるなあ。
今回は全編にわたって伏線が張ってあって、最終話でそれが生きてくるような仕掛けになっているのだが、それはわりと早く見破れた。
それほど意外性を出すつもりでもなかったんだろうが、ちょっと簡単すぎという気がしないでもない。
ただ、この小説のエラいところは、作中作まできっちりつくっているところ。
「戦場の魔法少女」というマンガが一つのキーになっているのだが、そのストーリーをかなり作りこんでいる。その是非はともかく。
あと作中に登場する漫才コンビのネタも、ごまかしたりしないでちゃんと読ませている。それが面白いかどうかはともかく。
作中作というのは、雰囲気だけ出しておいて詳細はごまかす、というパターンが多いので、そういう部分にも手を抜いてなかったのには感心した。

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