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遠田潤子「月桃夜」

日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
いつも思うが、この賞は新人賞としては相当レベルが高いよね。
新人とは思われない完成度の高い作品がいつも受賞している。
それに引きかえ、ミステリの新人賞は…。
まあいいけど。
カヤックで海に出たまま帰れなくなった茉莉花。彼女の前に現われた人語を喋る鷲は、とある哀しい物語を話しはじめる。
奄美大島の、貧しい労働者として一生働くことを運命られた「ヒザ」と呼ばれる階層の少年フィエクサ(鷲)と、血のつながらない妹サネン(月桃)。
ほんのすこし黍の汁をなめただけで片目を奪われるほど、厳しい生活を強いられる二人だが、お互いに励ましあいながら健気に生きていた。
フィエクサはとある老人から碁の面白さを教わり、次第に師をしのぐほどの腕前になっていく。
そんなある日、サネンが薩摩から来た役人の目にとまり、その男の元へとやられることになる。
どうしてもそれが許せないフィエクサだったが…。
禁断の愛…と言いつつ、実は血のつながらない兄妹なのだが、この2人の愛情の深さとそれを許さない時代の厳しさがあまりに切なくて、最後電車の中で読みながらボロ泣き。
まあ最初からアンハッピーエンドの気配が濃厚だったわけだが、単なるアンハッピーエンドではなくて、エンドしていないというか。
物語は物語として終わっているのだけれども、フィエクサとサネンの愛はまだ終わっていないという。
非常に余韻の残る最後だった。
それにしても、この時代の人々の生活の厳しさにはちょっと愕然とさせられるわ。
しかし、搾取する側と思えた薩摩もまた、江戸の徳川家によって搾取される側であり、その因果はどこまでも続いている。
それはまだ今の時代になっても完全には終わっていないんだけどな…。

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