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奥田英朗「オリンピックの身代金」

奥田英朗にしては、ほかの作品と作風がちょっと違ってた。
日本が東京オリンピックの開催に浮き足立っていた頃。
オリンピックの警備の責任者の家で、何者かがダイナマイトを爆発させるという事件が起きる。
政情を鑑みて世間には伏せられたのだが、ダイナマイトを使った爆破事件が立てつづけに起き、犯人としてとある東大生の名前が挙がる。
彼は東北の寒村の出身で、オリンピックのための工事の最中に急死した兄の代わりに、土方の仕事をしていた。
そして、勉強一筋だった自分の人生とは、まったく真逆の底辺の人々の生活を垣間見てしまい…。
なんというか、社会の不平等に理不尽な怒りを覚えたインテリのテロ行為、ということになるのだろうか。
突貫工事で行われたオリンピックの陰に、ここまで陰惨な現実があったとは驚き。
テロの是非はともかく、東京オリンピックが戦後復興の象徴のように言われていることが、いかに現実と離反していたか、考えるとちょっと切ない。
なんだか山田洋次の「息子」という映画を思い出した。
永瀬正敏目当てで見た映画なんだけど、ここの三国連太郎が、東京オリンピックのときに出稼ぎに来ていたという設定なんだよね。
東北にある家に帰れるのは盆と正月のみ、お土産を持って帰宅して、出迎えてくれる子供たちの笑顔だけが楽しみだったのに、年を取って老妻が亡くなると、「東京物語」みたいに子供たちの傍には自分の居場所がなかった…という切ないお話。
生活のために生活していた当時の人のことを思うと、自分探しで右往左往している現代がばかばかしく思えるわ。

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