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舞城王太郎「ビッチマグネット」

最近の舞城王太郎のぶっちぎり具合ときたら、とてもじゃないけどついていけない感じだったので、「ディスコ探偵水曜日」は結局上巻の途中で挫折。
今回もタイトルからしてちょっとなあ~と思っていたのだが、読んでみたら、「あれ、普通!」とびっくりした。
いつものしつこいような過剰な文体も影を潜めて、あくまでも内面描写に重点を置いている。
わ~こういう本も書けるんだな。
そもそも、私がこの作家のいい部分だと思っているのは、読者を韜晦させるような文体ではなくて、そこの奥に潜んでいる「人間の真実」みたいなところだったので、この本は大歓迎。
しかし、普段の舞城王太郎の作風が好きな人には物足りないかもしれない。
いっしょの布団で寝てしまう(別に近親相姦とかではなく)ぐらいに仲がよい姉弟。
ところが、思春期にさしかかり弟に彼女が出来たりしはじめてから、姉は情緒不安定になってしまう。
それでも、大学で恋人を作ったり、父親の愛人と遭遇してしまったりしているうちに、弟が彼女がらみの事件に巻き込まれて、大金を支払っていることが判明。
姉は断固立ち上がり、その彼女と対決するのだが…。
なんかこう書くと普通の話だけど…。
別に主題が姉と弟のあれこれじゃなくて、この主人公の女の子が高校生から大学を卒業して社会人となるまで、何の物語も持たない「からっぽ」だった自分から、一つの物語を生み出せる自分になるまでの成長物語なのだった。
かといって説教がましくは全然ない。
というか、私も弟がいる(別にそんな仲良くないけど)ので、彼女の心理になんだかすごく共感してしまった。
自分と周囲の人間との距離のとり方といい、なんだか自分を見ているようだ…。
舞城王太郎は、女性の一人称の話がうまいな。

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