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有栖川有栖「江神二郎の洞察」

有栖川有栖はあんまり読まないのだが、この江神先輩シリーズだけは欠かさず読んでいる。
なんでだろう。
火村英生は、あまりにも「名探偵」然としていて、あんまり魅力を感じないんだよなあ。
それに引き替え、江神先輩は謎が多くて、しかもあんまり名探偵っぷりを前面に押し出していない。
そこがストイックで好きなのだった。

しかし、今回は短編集。しかもアリスと出会ったばかりの初期の事件が多くて、ミステリーとしては全体的に大人しい感じだった。
推理以前の話も多かったしね。
ミステリ好きの大学生がよくやるような、ちょっとしたばか騒ぎの連続、という感じ。
まあそれもいいのだけれど。

でも江神先輩のシリーズは長編があと一作で終わりというのはつまらんなあ。
火村はわりとどうでもいいので、こっちのシリーズをもっと長期化させてほしい。
だって、シリーズの終わり方もきっと後味悪そうなんだもん。
江神先輩ってなんだか死亡フラグが立ちまくりというか。
よくても行方不明とかで終わりそうな予感。

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赤坂真理「東京プリズン」

ずっと読みたかった大作。
図書館に予約していてやっと届いた。
でも、想像していたのとはちょっと違う雰囲気…。
別に悪くはないんのだが、ちょっと作りこみすぎのような感じが。

アメリカのメイン州にホームステイをしていた16歳当時の自分と、なぜか電話でつながってしまった「マリ」。
母親であるかのように振る舞いながら、アメリカで「異国人」である少女の自分を励まそうとする。
そして、物語は16歳のマリと、現在の自分とを激しく往還し、あるいはベトナム人の双子と出会い、あるいは小さい人たちと会話しながら、日本とは、天皇とは何かを突きつけられていく。
そして、16歳のマリはディベートで「天皇の戦争責任」について論じなければならなくなり…。

てっきり、この東京裁判をめぐるディベートが物語の主体だと思っていたのだが、もちろんそれはそうなんだけど、それを取り巻く幻想シーンが思いのほか長かった。
もちろん、「天皇とは何か」に行きつくためには必要なパートなんだけど、あまりにもふわふわしすぎて、ちょっとテンポのずれを感じてしまった。
これは、津島佑子の作品の雰囲気に似ているんだけど、津島佑子はもっとそこらへんが自然な流れになっていたような。
「東京プリズン」は、ディベートでマリを激しく攻め立てるスペンサー先生のくだりと、それ以外の不可思議な現象のくだりの落差が大きすぎて、どっちのテンポで読めばいいのか戸惑うんだよなあ。

でも、最後の結論は本当にスバラシイ。
「そういえば、天皇というのはそういう人だった!」というのが深く心に納得できる。
これが納得できるのはおそらく、日本人だけなんだろうなあ。
天皇は英語で「エンペラー」だけど、エンペラーなんかではないという話。
「神」つながりでキリスト論にもなっているんだけど、こちらも激しく同意。
常々、「キリストって神じゃないよね?」と思っていたので、すっとした。
まあここらへんは異論があるかもしれんが。

最後のディベート以外で一番印象に残っているのは、実はハロウィンのシーンだったりする。
マリがハロウィンの仮装で、インディアンの恰好をしたら、みんなが凍り付いてしまったという。
わーこわ。
でも、白人のインディアンに対する罪の意識の表れなんだろうなあ。

ところで、この話はどこまで実話でどこまで創作なのか。
いっそ全部創作だといわれても納得できるけど…。
ホームステイしていたあたりは実話なんじゃないかという気がする。
ディベートも実話だったらそりゃすごいなあ。

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伊坂幸太郎「夜の国のクーパー」

ちょっとずつリハビリしていこう。
そうでないと、ヒマになったせいでソリティア中毒になりつつあるので…。

というわけで、伊坂幸太郎。
あれ…構想○年というわりには…。
うーん…面白くないわけではないんだけど、なんというか、自己模倣になっている作品という気がした。
伊坂幸太郎にあこがれている作家が、真似して書いた、みたいな。
「オーデュボンの祈り」を思い出した。

正直言って、途中で話のネタが大体わかってしまったし、第一「クーパー」の設定が無理やりすぎる。
最後のオチのために設定を作ったような感じなので、違和感がある。
もちろん、オチのために作り上げるのは構わないんだが、ファンタジーだから「それはズルイでしょ」となってしまうのだ。
まあ大体いつもファンタジー風味ではあるんだけど、今回みたいな異世界ファンタジーの場合は、もうちょっと設定に気を付けた方がいいんではないだろうか。

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