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赤坂真理「東京プリズン」

ずっと読みたかった大作。
図書館に予約していてやっと届いた。
でも、想像していたのとはちょっと違う雰囲気…。
別に悪くはないんのだが、ちょっと作りこみすぎのような感じが。

アメリカのメイン州にホームステイをしていた16歳当時の自分と、なぜか電話でつながってしまった「マリ」。
母親であるかのように振る舞いながら、アメリカで「異国人」である少女の自分を励まそうとする。
そして、物語は16歳のマリと、現在の自分とを激しく往還し、あるいはベトナム人の双子と出会い、あるいは小さい人たちと会話しながら、日本とは、天皇とは何かを突きつけられていく。
そして、16歳のマリはディベートで「天皇の戦争責任」について論じなければならなくなり…。

てっきり、この東京裁判をめぐるディベートが物語の主体だと思っていたのだが、もちろんそれはそうなんだけど、それを取り巻く幻想シーンが思いのほか長かった。
もちろん、「天皇とは何か」に行きつくためには必要なパートなんだけど、あまりにもふわふわしすぎて、ちょっとテンポのずれを感じてしまった。
これは、津島佑子の作品の雰囲気に似ているんだけど、津島佑子はもっとそこらへんが自然な流れになっていたような。
「東京プリズン」は、ディベートでマリを激しく攻め立てるスペンサー先生のくだりと、それ以外の不可思議な現象のくだりの落差が大きすぎて、どっちのテンポで読めばいいのか戸惑うんだよなあ。

でも、最後の結論は本当にスバラシイ。
「そういえば、天皇というのはそういう人だった!」というのが深く心に納得できる。
これが納得できるのはおそらく、日本人だけなんだろうなあ。
天皇は英語で「エンペラー」だけど、エンペラーなんかではないという話。
「神」つながりでキリスト論にもなっているんだけど、こちらも激しく同意。
常々、「キリストって神じゃないよね?」と思っていたので、すっとした。
まあここらへんは異論があるかもしれんが。

最後のディベート以外で一番印象に残っているのは、実はハロウィンのシーンだったりする。
マリがハロウィンの仮装で、インディアンの恰好をしたら、みんなが凍り付いてしまったという。
わーこわ。
でも、白人のインディアンに対する罪の意識の表れなんだろうなあ。

ところで、この話はどこまで実話でどこまで創作なのか。
いっそ全部創作だといわれても納得できるけど…。
ホームステイしていたあたりは実話なんじゃないかという気がする。
ディベートも実話だったらそりゃすごいなあ。

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