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いとうせいこう「想像ラジオ」

これ、なんで芥川賞受賞しなかったんだろう。
やっぱり「文体の芥川賞、人間の直木賞」だからか?(わたしが勝手に考えた)
文体が特殊じゃないと、芥川賞はとれない。
だから「想像ラジオ」が受賞しなかったのも無理はない。
…と思いたい。

あらすじも今更なので割愛するが。
まずは、東日本大震災の犠牲者の一人による「ラジオ中継」という設定がものすごい。
読んでみると、すっとなじんでしまうので、この設定のすごさがスルーされてしまっているんじゃないかという気がする。
そしてDJだけでなく、視聴者もまた、震災の犠牲者たち。
かろうじて生き残った者たちの中には、彼らの声が聞こえるものもあり、聞こえないものもあり。

私なりの解釈だが、いとうせいこうは、「犠牲者○人」という数の上での犠牲者像ではなくて、一人ひとりにしっかりとフォーカスしたかったんじゃないだろうか。
亡くなった人それぞれに人生があり、家族があり、生活があった。
それをもう一度再確認するために、この小説を書いたんじゃないかと思う。

そこにあったのは、あまりにもありふれた人生。
だがそれがある日突然、断絶されてしまう。
その不条理に対する憤り…ではない。
むしろ「祈り」。
彼らの声を聞き取ることこそが鎮魂であるということ。
死者の語りを勝手に語るという誹りを恐れずに、彼らの声にしっかりと耳を澄まそうという、作者なりの決意の表明なんではないかと。

思い出したのは「東京プリズン」。
これも、ある意味「祈り」がテーマだった。
太平洋戦争と東日本大震災、何かと比較されることの多かったこの二つの出来事が、「祈り」という行為でつながったような、そんな気がした。

やっぱりいとうせいこうはすごいな。
芥川賞は、いらなかったかもしれないな。
大体、新人作家じゃないし。
なんで新人扱いされるのかわからん。
「ワールズエンドガーデン」とか「解体屋外伝」とか、昔の名作がいっぱいあるのに。

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