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宮部みゆき「霊験お初捕り物帳」

「ペテロの葬列」が終わった。
原作を読んでいないまま、ドラマだけ先に見たのだが…う~ん。
相変わらず、後味の悪い終わり方だ。
でも、遅かれ早かれああいう展開になることはわかっていた気がする。
杉村はやっぱり、探偵として独立していくべきだよ。
小泉孝太郎も、そんなに大して魅力のある俳優だとは思っていなかったけど、品の良さと人柄の良さが、あそこまで嫌味なくハマるとは思わなかった。当たり役だね。

というわけで、宮部みゆきの初期作品を読んでいなかったことに気づき、今更読んでみた。
やっぱりこの人は時代小説の方が生き生きしているね。何度も言っているけど。
霊験お初というだけあって、いつものように「霊感」をもつ少女が主人公のシリーズ。
霊感がうまいこと働きすぎじゃない?というきらいはあるが、「震える岩」では忠臣蔵と絡めたり、「天狗風」ではしゃべる猫が出てきたりと、いろんな趣向を凝らして飽きさせない。

「三島屋シリーズ」が一番好きなんだけど、こっちもいいなあ。
しかし、もうお初のシリーズは新作が出そうにないな。
お初と右京之介がどうなるのかもちょっと気になるのだが。

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椰月美智子「その青の、その先の」

ちょっとコンプレックスがありつつも、3人の親友と落語家を目指す彼氏に囲まれて、幸せな青春の日々を送っているまひる。
親友の一人のクロノは美少女だがロック歌手を目指している変わり者、そしておっとりしているとおもっていた睦美は惚れっぽく、しっかり者の夏海は切ない片思いをしていた。
恋や進路の悩みなどもありつつ、それでもかけがえのない日々が、恋人の事故であっけなく崩れ去ってしまう。

青春の痛恥ずかしい感じがよく出ていて、なかなかいい小説だった。
まひるが、ちょっとかっこいいクラスの男子に「邪険にされている」と感じるところが、ものすごく共感できた。
少女マンガなんかでは、好きというキモチの裏返しでそういう態度をとったりするが、現実にはどうでもいい相手だからそういう態度なんだよね。
微妙に友人のクロノとの態度の違いに気づいて、落ち込むまひるの気持ちがすんごくよくわかった。

そんな平凡なまひるが、突然絶望のどん底に落とされるところもリアル。
わたしも家族でそういう思いをしたからなあ。
平凡で幸せな日々というのは、本当にあっさり覆ってしまったりするものなのよ。
だからこそ、日常がかけがえのないものだと気づかされるというか。

終盤の展開には賛否両論あるかと思うが、これがあるからこそ、まひるの青春の輝きがクローズアップされるので、わたしは良かったと思う。
高校生にはオススメの一冊。

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宅間孝行「くちづけ」

元は舞台で、それから映画化されたという話を、ノベライズで読んだ。
あー…電車の中で思わず泣いてしまったよ。

知的障害者たちが暮らす「ひまわり荘」。
住人たちは問題を起こしながらも、みんな仲良く平和に暮らしていた。
そこに管理人として、売れない漫画家の愛情いっぽんが娘とともにやってくる。
娘のマコも障害者で、ひまわり荘に住むうーやんと仲良くなり、幸せな日々が続くかのように思われた。
が、うーやんの妹の結婚話が持ち上がり、また愛情いっぽんが体調を崩したことで、その均衡はあっけなく崩れていく。

結婚の約束をしていたマコとうーやん。
もちろん、そんなのは実現不可能なんだけど、もしかしたら…と思わせられるラストが悲しい。
最後にうーやんが、マコを待っているシーンが泣けてしょうがなかった。

なんというか…実話を元にしているだけに、「こんなことあるか!」とはとても言えない…。
障害者の人たちの生活というのが、いかに危うい状況で成り立っているのか、ということが切ないくらいに伝わってくる。
周囲の理解があって、また住む場所と生活の糧が得られれば何とかなるが、それのどれか一つでも失われると、たちまち居場所を失ってしまうんだよね。
マコの父親がやったことは許されないかもしれなけど、でも健常者として不自由なく暮らしている人間には、彼を責めることはできないと思う。

細かいところでは、「ひまわり荘」を運営していた国村先生が、「こういうことをしているのは、みんなに褒められたいからです!」と言っていたのが忘れられない。
わたしも小学校のときに手話を習っていて、将来は養護学校の先生になりたいとか言っていたけど、そういう下心があってのことだったからなあ。
自分の偽善に気づいて、あっさり進路を変えたけど。
でも偽善でもなんでも、実行することがえらいんだよな。本当は。

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池井戸潤「七つの会議」

最近はまっている池井戸潤。
なんだかんだ言ってもやっぱり面白い。

「七つの会議」は短編集なんだけど、舞台はつながっているパターン。
営業のエースが「パワハラ」という理由で左遷になり、繰り上がりで昇任することになった原島。
ところが、その左遷の裏側には、会社が抱える恐ろしい秘密が隠されていた。

一つ一つのエピソードはばらばらなんだけど、最終的にはその会社の犯してしまった犯罪につながってくるという構成。
設定としては、「空飛ぶタイヤ」の裏返しというか。
あちらが会社の不正を暴いていく話だとすると、こちらはひたすら隠蔽しようとする話。
まあ隠蔽したくなる気持ちもわからんでもないが…。
ひとつ道を踏み外すと、会社の存続にかかわる大問題になる可能性もあるという、怖い話だった。

そうえば、ベネッセがそんな感じになりつつあるな。
最初は一人の犯罪だとしても、最終的に責任をとるのは会社だから。
読んでいてスカッとするタイプの話ではないけど、しみじみリアルな小説だった。

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