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宅間孝行「くちづけ」

元は舞台で、それから映画化されたという話を、ノベライズで読んだ。
あー…電車の中で思わず泣いてしまったよ。

知的障害者たちが暮らす「ひまわり荘」。
住人たちは問題を起こしながらも、みんな仲良く平和に暮らしていた。
そこに管理人として、売れない漫画家の愛情いっぽんが娘とともにやってくる。
娘のマコも障害者で、ひまわり荘に住むうーやんと仲良くなり、幸せな日々が続くかのように思われた。
が、うーやんの妹の結婚話が持ち上がり、また愛情いっぽんが体調を崩したことで、その均衡はあっけなく崩れていく。

結婚の約束をしていたマコとうーやん。
もちろん、そんなのは実現不可能なんだけど、もしかしたら…と思わせられるラストが悲しい。
最後にうーやんが、マコを待っているシーンが泣けてしょうがなかった。

なんというか…実話を元にしているだけに、「こんなことあるか!」とはとても言えない…。
障害者の人たちの生活というのが、いかに危うい状況で成り立っているのか、ということが切ないくらいに伝わってくる。
周囲の理解があって、また住む場所と生活の糧が得られれば何とかなるが、それのどれか一つでも失われると、たちまち居場所を失ってしまうんだよね。
マコの父親がやったことは許されないかもしれなけど、でも健常者として不自由なく暮らしている人間には、彼を責めることはできないと思う。

細かいところでは、「ひまわり荘」を運営していた国村先生が、「こういうことをしているのは、みんなに褒められたいからです!」と言っていたのが忘れられない。
わたしも小学校のときに手話を習っていて、将来は養護学校の先生になりたいとか言っていたけど、そういう下心があってのことだったからなあ。
自分の偽善に気づいて、あっさり進路を変えたけど。
でも偽善でもなんでも、実行することがえらいんだよな。本当は。

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