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宮部みゆき「火車」

これも古い作品だけど未読だった。
サラ金地獄を描いた社会派ミステリー。

ケガをして休職中の刑事の俊介は、遠縁の青年に頼まれて、失踪してしまったという彼の婚約者を探すことに。
自己破産をしたという過去があった彼女だが、行方を捜していくうちに、その背後にとんでもない謎が隠されていることが発覚。
なんと、彼女は戸籍上にある人物とは全く別の人間だった…。

カードローン、借金地獄の恐ろしさをとことんまで描いていて、かなり怖い。
一番怖かったのが、失踪した彼女の友人が、「久しぶりに会ったら、なまものが一切食べられなくなっていた」と証言したところ。
いわゆる、裏の世界で生きていたせいでっていう…生々しいよお。

今は借金取りに捕まったら、人生おしまい、というほどまでではなくなっているはずだけど、かつては確かにこういう時代があったよね。
この間、会社の研修でこういうサラ金に勤めていた人の話を聞いたんだが、自殺する人がばんばんいたりして、本当に地獄だったらしい。
でも他人事じゃないよなあ。

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スティーヴン・キング「11/22/63」

いや~キングはすげえな。
もうけっこういい年齢だと思うんだけれども、それでもこんな面白い話を書いちゃうんだから。
かなりの長編なんだけど、本当に引き込まれた。

とある学校で文学を教えているジェイクは、知り合いのアルが一夜にして何歳も老け込んでしまったのを見て驚愕させられる。
アルはジェイクを自分の店の地下へと連れて行き、「ここを通ってみろ」という。
言われるままにジェイクが進んだ先にあったのは、1958年のその街だった。
肺がんに侵されているというアルは、ジェイクにある重大なことを頼む。
「ケネディの暗殺を阻止して、アメリカの歴史を変えてほしい」と。
悩んだ末に、アルの頼みを受け入れることにするジェイクだが…。

ケネディの暗殺の阻止がまあクライマックスなんだが、タイムトラベルの目的はそれだけではなく、ジェイクの年上の教え子が、酔った父親の暴力によって障害を負ってしまうという過去を変える、という目的もあったのだった。
これはこれで、かなりの見どころ。というよりも、結果がわかっているケネディよりも、どうなるのかわからない部分があって、読んでいてハラハラさせられた。

そして、このタイムトラベルのミソは、「行くときはいつも最初の旅」というところ。
何度でも行ったり来たりできるのだが、行くときには前回のタイムトラベルはリセットされている。
全部最初からやり直さないといけない。
あと、行けるのが必ず「1958年」だというところもミソ。
暗殺のある1963年まで5年という月日がかかり、その間にジェイクの身に様々なことが起こり、それがストーリーに深みを与えている。
結末はなんとなくわかっていたような気がするけど、それでもじんわりさせられた。

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有川浩「三匹のおっさんふたたび」

「三匹のおっさん」もドラマ化されていたけど、このドラマは見ていなかった。
評判はよかったらしいね。

で、「ふたたび」ということで続編。
前作はもうちょっと面白い話だったような気がするんだが、今回はね~。
たまにあるのだが、「作者が世間に対して抱いている不満を小説に代弁させる」という典型だよね。
東直己もこのパターンで、けっこう辟易させれたのだった。
一つ一つのストーリーは全然大したことなくて、ひたすらグチッぽい。
そして主人公周りだけはいい人ばっかり。
なんだかなあ。
もうちょっと、ストーリーとしての面白さを考えてほしいわ。
安直な勧善懲悪とかじゃなくてさ。

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梶ようこ「桃のひこばえ」

水上草介を主人公とするシリーズの第2弾。
シリーズの前作も読んだはずなんだが、全然覚えてない…。

小石川の「御薬園」で、薬草を育てている草介。
そこには、病気やらケガやらをした庶民たちが次々とやってきては問題を起こしていく。
いちいちそんな小さな事件に巻き込まれてしまう草介だが、次第に自分が今のままでいいのかという疑問を抱くようになる…。

まあ軽く読める時代小説。
軽すぎるな。ある意味。
草介がちょっと現代的すぎる。
すぐにアワアワしちゃうところとか、まあそういうキャラなんだけど、この時代に照らしてみると、あまりにもリアリティがない。
もうちょっとシリアスなエピソードがあってもいいような気がする。

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奥泉光「東京自叙伝」

この作家は、いつでもチャレンジングな小説を作るなあ~。
感心するしかない。
この「東京自叙伝」も、設定からしてぶっ飛んでいるのだが、それが猛烈に面白い。

幕末から現代まで、東京で生まれ育ったとある男の輪廻転生の話。
常に時代の流れに乗っかって、のらりくらりと生きている無責任男の一人語りで話が進んでいく。
とにかく、この男が本当にひどい。
「無責任」とかそういう次元じゃないよね。
どうしても辻斬りをしたくなって、適当な相手を見つけて斬ったはいいけど、その犯人として別の男が捕まったのを「まあ元から社会には害になるような男だったので、なるべくしてそうなった」などと、まったく反省の色がない。
そして、いろいろ都合が悪くなると、どんどんと転生を繰り返す。だが、舞台は必ず東京なのだった。
激動の幕末明治を乗り越え、関東大震災や太平洋戦争を乗り越え、戦後の混乱期を社会の裏側で生きていく。

したたかで、本当に図々しくて、ずぶとくて、でもなんとなく憎めないこの「男」の造形が本当にすごい。
帯文にもあったけど、この男は日本人そのものなんだよなあ。
なんとなく時流に乗っかって、のらりくらりしている。
そして常に過去を反省しない。
日本人って本当にどうしようもないな。
「東京自叙伝」というタイトルだけど「日本人自伝」でもいいかもしれない。

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