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山本弘「翼を持つ少女」

表紙の絵がライトノベルっぽくてどうかな~と思ったのだが、読んでみたらなかなか面白かった。
「ビブリオバトル」をテーマにした本。

ビブリオバトルというのは、5分の持ち時間で自分の好きな本を紹介し、それを聞いた人が「どの本が読みたくなったか」というのを投票して、チャンプ本を選ぶという競技。
一回参加してみたいのだが、やっぱり自意識が邪魔してなかなか難しい。

とある高校の「ビブリオバトル部」に所属する面々が、お互いの本を通して理解を深めていくというストーリー。
主人公の伏木空がいかにもどんくさいメガネの女の子で、それに対するのが兄を事故で亡くした寡黙な少年だったりして、ちょっとありきたりなキャラクターかも。
ほかもキャラが立ちすぎていて読みづらい部分もあり。
それさえなければかなり面白い本。

何が面白いって、紹介されている本が面白そう。
主人公の空がSFオタクということなので、圧倒的にSFが多いのだが(作者もSF作家だから当たり前といえば当たり前)、それ以外のノンフィクションなんかも面白そう。
ただ、やっぱり作者の得意分野の科学系が多いように感じるので、もうちょっと違ったジャンルも取り上げてくれるといいなあ。

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ロジーナ・ハリソン「おだまり、ローズ」

最近メイドものの本をよく見るのだが、これぞ本物のメイドの自伝。
アスター家の女主人付きメイドとして三十年以上勤めてきた著者が、イギリスの伯爵家の日常と、一風かわった女主人のキャラクターを丁寧に綴る。

原題はもっとふつうのタイトルなのだが、この女主人の口癖が「おだまり、ローズ」なので、まさにぴったりのタイトル。
逆にこのタイトルじゃなければ、これほど売れなかっただろうな。
メイドと言っても、森薫の「エマ」みたいに、絶対に越えられない壁があるという感じでもなく、主人と丁々発止のやりとりをするあたりは痛快。
執事もリー氏という超優秀な人材がいるのだが、女主人に不満がおさえきれず、「やめさせていただきます」と告げたところ、彼女が「これからどこに行くのか教えて。わたしもそこに行くから」と言ったというやりとりは興味深い。
主人が絶対的に偉いというわけでなく、主人とそこに使える人間というのは、お互いに必要としあっているのだな、ということがよくわかる。
もちろん越えられない壁もあっただろうけれども、それ以前に人間としてちゃんと尊敬しあっていたことが伝わってくるのだ。
もうこの時代に戻ることはないだろうなあ。

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川上未映子「きみは赤ちゃん」

川上未映子と阿部和重が結婚したのは、文学界的にはなかなか衝撃的なニュースだったが、無事に赤ちゃんが生まれたということで、そう簡単には別れたりしないだろうと。
そんな赤ちゃんが生まれるまでのエッセイ。

まあよくある妊娠エッセイと言ってしまえばそれまでなんだけど、きちんと自分の不安とか体調不良とかを言葉にしているのはさすが。
「妊娠中だから」で片づけず、子供を産んだあとにどのように変化したか、妊娠する前はどう感じていたかをきちんと書いている。
だからこそ、妊娠中の不安感がものすごく読む者に迫ってくるという。

一番ヒサンだったのは、無痛分娩を選んだにも関わらず、なかなか子宮口が開かず、結局帝王切開になってしまったというあたり。
それはそれで麻酔で生むということになるんだろうけど、予想と違う展開になることのストレスって半端ないだろうなあ。
わたしの友人も帝王切開だったけど、「みんなにお腹を痛めて産んでないといわれる」とか言ってたな。
そういう物理的な意味なのか…?

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宮部みゆき「ソロモンの偽証」

ものすっごい分厚い三冊セット。
連載開始がちょっとびっくりするぐらい昔だった。
どれだけの期間連載していたんだろうか…?

雪の朝、とある中学校で屋上から落ちて死亡した中学生の死体が発見される。
ほとんど登校することのなかった彼は、当初自殺とみられていたのだが、「男子生徒が突き落すのを見た」という告発文が送られてきたことで、事件はまったく違う様相を見せ始める。
ワイドショーなどでも取り上げられ、たちまち事件の渦中となった同級生の女子生徒は、「自分たちで真実を取り戻したい」と、校内裁判を開くことを提案する。

まあまとめてしまえばこれだけの話なんだけど。
わりと初手から展開が見えていたものの、主人公の涼子が非常にすがすがしいキャラクターで、一気に読まされた。
というか、犯人扱いされた同級生が、序盤では道徳心のない生徒っぽかったのに、終盤ではお父さんが怖いだけの中学生になっちゃったのはちょっと疑問だった。
長い連載の間で、彼だけが唯一人格が変貌してしまった感じ。
でも、あとは盤石だったのはさすがというべきか。

気になったのは映画版。
これ、どうやって映画化したのかなあ…。
序盤は事件が多いけど、終盤はほとんど会話だけなので、映画で見せ場をつくるのはなかなか難しそうだ。

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