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R.J.パラシオ「ワンダー」

ジャンルとしては児童書なんだけど、ぜひ子どもに読んでほしい感動の一冊。

オーガストは「顔」に障害を持って生まれてきた。
何度も手術を繰り返してきたにも関わらず、見るものをぎょっとさせる顔のまま、学校にも行かずに生活してきた。
しかしとうとう学校へ行くことになり、新しい友達ができたかに思えたのだが…。

視点がオーガストだけでなく、その姉や、友人のジャック、それから姉の親友、姉のボーイフレンドと、いろいろ変化していく。
だから余計に、「オーガストの見た目」がどんな風かを読者は客観的に知ることができる。
しかしいろいろ考えさせれるな。
やっぱり体の障害に対してはある程度寛容になれても、顔がふつうと違うということに対して、平静に受け止めることができないということを思い知らされる。
顔なんて生活していくうえで何も関係ないはずなのに(オーガストは咀嚼にも障害があるけど)、それでも体が不自由な人よりもずっと多くの差別をうけなくてはいけないのだな。

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中島京子「かたづの!」

こちらも歴史に翻弄される女性の話。
東北の小藩で幼馴染の夫と幸せな生活を送っていたねね。
ふとしたことで出会った、一本角の羚羊を可愛がるのだが、のちにその羚羊は一本の角(かたづの)となり、物語の語り手としてねねを見守っていく。

頼りにしていた夫が若くして突然死に、後継ぎとなるはずだった長男も続けざまに亡くなってしまう。
失意の中で、ねねは藩を守るために自ら女主人となることを決意する。
「かたづの」の持つ不思議な力に助けられながら、ただひたすら「戦わない」ことで自分たちを守ろうとするのだが…。

正直、決して後味のいい話ではない。
それどころか、かなり陰惨な話なのだが、語り手が「角」というユニークさと、河童たちがねねを助けてくれたりと、ところどころに中島京子らしいユーモアがあふれている。

それにしても、ねねの叔父がすさまじい。
敵を毒殺するために、自分の息子に毒見させて、結局は息子ともども殺してしまう。
こういう暗黒の時代があったんだなあ。

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宮尾登美子「天璋院篤姫」

ドラマの方はあんまりちゃんと見ていなかったのだが、原作がこれだけ面白いから、ドラマも人気が出たんだろうなあ。

島津家の傍流の姫として生まれたおかつ。
幼いころから歴史に興味を持ち、負けん気が強い少女として育つ。
そこを島津斉彬に認められ、徳川家の正室として嫁ぐことになる。
だが、幕末の将軍家をめぐる動きに翻弄され…。

篤姫視点の話なので、たとえば和宮との不仲とかも、単に「気に入らない」で片づけることなく、きちんと理由づけしている。
つまり完全に篤姫擁護の立場なんだけど、でもそうしたくなるぐらい篤姫ってかなり過酷な人生を歩んでいるわけで。
イメージだと意地悪な大奥の小姑だけど、実際は和宮たちと十何歳しか違わなかったので、若い身空で大奥を仕切っていたということをきちんと評価するべきなんだろうなあ。

でもやっぱり、正室になったあとはあっという間に未亡人になってしまうし、歴史に翻弄されるばかりなので、嫁ぐ前までが面白かったな。

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柚木麻子「本屋さんのダイアナ」

柚木麻子は「ランチのあっこちゃん」が結構面白かった。
でもこっちの方が断然面白い!
本好きの人にはたまらないお話。

水商売で働く母親と暮らすダイアナ。
しかし、漢字で大穴と書く自分の名前が大嫌いで、育ちのいい彩子に憧れている。
一方彩子は、料理家の母親と編集者の父親の間で、ごくごく真面目に育てられ、母親の趣味でキャラクターのTシャツを着せられているダイアナがうらやましくて仕方がない。
お互いにお互いがうらやましい二人は、「本」という共通の趣味で、無二の親友となる。
ところが、中学受験をきっかけに二人の進路が大きく分かれてしまい…。

タイトルには「ダイアナ」の名前が出ているけど、彩子も主人公。
どちらかというと、彩子の方が不幸な人生を歩んでしまうのがなんだか悲しい…。
でもそれも含めて、最後に二人がやっぱり好きな本を通してよりを戻していく過程が非常に美しい。
「赤毛のアン」を土台にしているので、そういった作品を知っているとより楽しめる。

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