« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »

藤谷治「船に乗れ!」

音大付属高校が舞台ということで、吹奏楽部出身の私には共感できるかと思い読んでみた。
ところがなあ…。

音楽一家に育ったサトルは、チェロで音大付属の高校へと通うことになる。
その学校はサトルの祖父が理事長を務めているのだが、音大付属の高校としてはかなりレベルが低い学校だった。
「プロになれるかどうかギリギリ」という生徒たちが集う中、一際目立つ才能を持つバイオリニストの南と親しくなり、やがて二人は付き合うようになる。
だが、サトルが親類の紹介でドイツに留学することになり、すべてがおかしくなってしまう。

わたしは中学の吹奏楽部だったから、音大付属のオケとは状況がだいぶ違うのだが、プロを目指して小さいころから練習してきた生徒ってこんな感じなの?
一人で演奏することには慣れているけど、合奏したことがないから、オケで合わせようとしたらバラバラとか。
普通に楽譜を追っていたら、そうそうバラバラにはならないと思うけどなあ。
元の曲を知らないというならまだしも。
まあ、弾いている曲のレベルが違うんだろうけど。

音楽面はさておいて、ストーリーもなあ。
これが青春小説として今一つ人気が出ないのは、サトルと南の別れ方が救いようがないから。
ほろ苦いなんてもんじゃない。はあ!?って感じ。
そして自暴自棄になったサトルが、恩師にした仕打ちもまた許されるものじゃない。
青春の蹉跌なんて言葉じゃ表現できない悲惨さが、読者を打ちのめすのよ。
あんまり学生にすすめたい話ではない。

| | コメント (0)

宮部みゆき「荒神」

新聞連載の方ではずっと読んでいたけど、まとめて読むのは初めて。
これはやっぱりイラストあっての小説でしょう!ということで、「荒神絵巻」も一緒に借りてきた。
こうの史代の絵があると、陰惨な話が中和される気がする。

蓑吉の住む村に、ある日とつぜん見たこともない化け物が襲いかかる。
必死に逃げた蓑吉だったが、彼を助けてくれたのは、蓑吉が住む村とは敵対している村に住む、朱音たちだった。
しばらくはそこでのんびりとした生活を送っていたのだが、化け物は彼らのところにも姿を現すようになる。
そして、朱音の兄がその混乱に便乗しようとしはじめ…。

最後が本当にやりきれないわ。
いろんな登場人物がいるのだが、ほぼみんな死亡。
宮部みゆきって、わりと登場人物を簡単に殺すよね。
なんかなあ…。

| | コメント (0)

奥泉光「ビビビ・ビバップ」

わたしのオールタイムベストワンの小説「鳥類学者のファンタジア」の続編がついに!
まあ厳密には続編とも言い難いのだけど…。

21世紀末、前作のフォギーの血縁にあたるキリコは、AIで多大な功績を持つ知人に、「自分の葬式でピアノを弾いてほしい」という依頼を受ける。
ところが、その依頼人の死は秘匿され、彼の頭脳をコピーした人工知能が暴走を始めてしまう。
フォギーはその渦中に巻き込まれてしまうのだが…。

登場人物は全然違うんだけど、前作とほとんど同じという。
フォギーは別人だけどフォギーのまんまだし、彼女を「師匠」と慕う少女も登場するし、そしてロボットだけど猫も登場する。
あと、何より読者を喜ばせるのが、仮想現実の世界で再現された70年代の新宿。
混沌としたなかにも、若き日の寺山修司やらビートたけしやらが集って、なんだか楽しそう。
こういう遊びができちゃうところが、奥泉光のいいところなんだよな。

ただ、難を言えば、設定が近未来なのでいろいろと状況が感情移入しづらいところだろうか。
たとえば、本屋が駆逐されて、紀伊国屋書店が「本を全部ここに並べて売るなんて効率の悪いことをしていたの?」と驚かれる場面。
まあ確かにそうなんだけどさ…。

| | コメント (0)

戌井昭人「のろい男」

「俳優・亀岡拓治」の第二弾。
売れているとは言わないが、バイプレイヤーとしてそこそこ仕事に定評がある俳優・亀岡。
今日も今日とて、様々な映画の現場に足を運び、珍妙な役を演じ切るのだった…。

あーやっぱ面白いわ。これ。
なんというか…面白がらせようと一生懸命じゃないのに面白い感じ。
よくわからんが。
安田顕が主演で映画化もされていて、ちょっと観に行こうかと思ったけど、映画館で観るほどのもんじゃないかな~と思ってやめたのだった。
でも、安田顕は絶妙なキャスティングだと思う。
ムロツヨシだとちょっとアクが強すぎる。

| | コメント (0)

梶尾真治「クロノス・ジョウンターの伝説」

「クロノス・ジョウンター」とは、物質過去射出機と呼ばれる、いわばタイムマシンのようなもの。
これを使えば過去に行くことができるのだが、しかし元の時代に戻ってくることができない。
どういった作用なのか、古い過去に行けばいくほど、戻るときに遠い未来へと行ってしまうのだった。

片思いの相手を事故から救いたい男、ずっとすれ違い続けた母に一目会いに行った男、幼いころに病気でなくなった少年を救うために、特効薬を持って跳んだ女…。
さまざまな事情を抱えて「クロノス・ジョウンター」を使った人々は、その「元の時代に戻れない」という制約の中で、必死にあがこうとする。

正直、どれもハッピーエンドになれるとは思わなかったので、イマイチ読む気がしなかったのだが、ぜんぶハッピーエンドだった。
考えてみれば「怨讐星域」ですらすがすがしい終わり方していたんだから、予想できてしかるべきだったのかも。
ただ、タイムマシン(とは作中では言っていないが)があるのに、まったく話題になっていないという設定に無理がないか?
みんな飛びつくと思うのだが。

| | コメント (0)

宮部みゆき「模倣犯」

久しぶりに読んだら、ちょうどドラマもやっていた。
主人公は中谷美紀で、犯人役は坂口健太郎。中谷美紀は正直どうかな?と思ったが、なかなかピッタリだった。
坂口健太郎も、好青年と狂気を持った青年の両方をうまく演じていたと思う。

ストーリーはいまさらなので、説明しないけれども、改めて「模倣犯」ってタイトルはなんでだろう?と読んでいる最中ずっと疑問だった。
それが氷解するのは、最後の最後の一番クライマックスのところ。
なるほどな~。このクライマックスをめがけて、ストーリーを立ち上げていたんだな。
そう考えるとすごいわ。

| | コメント (0)

« 2016年10月 | トップページ | 2016年12月 »