« 2017年1月 | トップページ | 2017年3月 »

野崎まど「know」

電子葉という、脳から直接ネットワークに接続して、瞬時にあらゆる情報にアクセスできるチップを埋め込むのが当たり前となっている近未来。
社会的な地位によってアクセスできる情報レベルが異なり、そのかなり上層部に位置している御野・連レルは、かつての恩師が残した暗号を発見。
行方不明となっていた恩師の居場所を突き止めるのだが、彼は御野の目前で自殺し、残されたのは一人の少女だった…。

「ラプラスの魔」という言葉があって、それの意味は、ありとあらゆる情報を知ることができていれば、未来をも知ることができるというものなんだけど。
これを小説化したような世界。
恩師が残した少女は、地球上のほぼすべての情報を獲得しており、それがゆえに未来を見通すことができる。
SFの設定としては、非常にリアリティがあって面白かった。
電子葉的な発想は、たしか菅浩江の作品でも読んだことがあったけど、これは遅かれ早かれ現実化するだろうな。

それにしても、なんでこの作家の登場人物はいつもヘンな名前なんだろ。
ライトノベル臭がして、損していると思う。

| | コメント (0)

伊坂幸太郎「アイネクライネナハトムジーク」

ヘビー級チャンピオンのボクシングの試合を軸に、様々な人間たちの「出会い」が描かれる短編集。
伊坂幸太郎らしく、それぞれの登場人物が関係しているので面白く読めた。
やっぱり、これが真骨頂だよね。
それぞれのキャラクターも味わいがあってよかったのだが、特に「斉藤さん」と呼ばれる路上ミュージシャンの存在が秀逸。
困ったときに「斉藤さん」のところへ行って百円を払うと、その時の気持ちにぴったりあったワンフレーズを聞かせてくれるのだ。
あとがきを読んで、これが齋藤和義のために書かれた作品だとわかって納得。
歌詞がホンモノなのかどうかが気になるが。

| | コメント (0)

和田竜「村上海賊の娘」

戦国時代、大阪本願寺を攻めようとする織田信長に対して、味方につくか敵につくかでお互いの一挙一動を謀る大名たち。
そんな中、村上海賊の娘として生まれた景は、本願寺に向かおうとする信徒をなぜか送り届けることになり、戦の渦中へと身を投じることになる。

予備知識ゼロで読み始めたのだが、てっきりもっと長いスパンの話かと思っていた。
村上海賊の娘の生涯を描く、みたいな。
しかし実際はごくごく短い期間の話だったんだな。
景のキャラクターがあまりにもアニメチックというか、戯画化されすぎている傾向があるが、それもまあ味かなあ。

時代小説としては新味があるかもしれないけれど、ちょっとがちゃがちゃしすぎたかな。
「のぼうの城」もそうだったけど、キャラを立てすぎてストーリーがすっと入ってこないのよ。
たぶん、これも映画化されると思うが、だれが景を演じるのかだけが気になった。
昔の基準だとブスで、今の基準だと美人らしいから。

| | コメント (0)

角幡唯介「雪男は向こうからやってきた」

「空白の5マイル」に続けて冒険モノ。
作者のもとに、「雪男探検隊に参加しないか」という突拍子もない誘いがくる。
雪男の存在を信じてなかった作者はもちろん断ろうとするのだが、実際に探検に参加した人々や、有名登山家の目撃情報などを聞き、「もしかしたら…」と思うようになる。

こちらも結局、雪男発見には至らない(あたりまえ)だが、まあそれは仕方なしか。
高野秀行も「ムベンベ」を探しにコンゴまで出かけて行ったりしていて、かなり似たスタンスを感じるのだが、違うところは、こっちの方がかなり冷めている、ということだろうか。
雪男の存在そのものよりも、それを追い求める人々に焦点を当てることで、うまいこと展開させている。
まあ個人的には、別の生き物の見間違いだろうなと思うが。

| | コメント (0)

角幡唯介「空白の五マイル」

著者が長年の夢だった、チベットに存在する「幻の五マイル」を探検するというドキュメント。
実は、この本ではなくて「漂流」の方が読みたかったのだが、今ちょっと話題になっているせいで借りられなかったのでこちらを借りてみた。
一人でチベット探検というのもすごいが、その無謀さもすごい。
若かったせいもあるかと思うが、とりあえず目的地に向かったはいいものの、外国人の立ち入りは禁止されているので、しょっぱなから頓挫。
…となっては元も子もないので、ありとあらゆる手段を使って、奥地へと入り込む。
しかし、現地案内もなしに一人で行くのはさすがに無謀すぎて、かなり生死の境をさまようことに。
結局、空白の5マイルは解明されたようなされていないような、ちょっと中途半端な感じだが、「ついに発見!」とか、川口ひろし探検隊みたいなんじゃない方がリアルかもしれない。

| | コメント (0)

ピエール・ルメートル「死のドレスを花婿に」

気が付くと、家庭教師として教えていた子供の死体を抱えていたソフィー。
一体何があったのか、自分は何をしでかしてしまったのか。
ところどころ記憶を失い、そのために人生を狂わされてきたソフィー。
名前や素性を隠して結婚することで、新しい人生を手に入れようとするのだが…。

途中で、犯人であるフランツの視点が入り、ソフィーの過去がわかるのだが、それだけで終わらないのがこの作者。
「アレックス」なみに途中で大どんでん返しを食らわせて、最後は痛烈な復讐劇に変わる。
それにしても、こういうのをどうやって思いつくのか。
作者の頭の中が恐ろしいわ。

| | コメント (0)

« 2017年1月 | トップページ | 2017年3月 »