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青柳いづみこ「ショパン・コンクール」

なんとなく手に取ってみた本なのだが、これが予想外に面白かった。
ノンフィクションである。

2015年に行われた「ショパン・コンクール」の進行を描くとともに、ショパンの生涯やショパン・コンクールの誕生とその歴史などをバランスよく配置した一冊。

作者はもちろんピアニストなのだが、コンクールの参加者一人ひとりの演奏を事細かに報告しており、聞いていなくてもどんな演奏だったかがわかるというのがスバラシイ。
これは聞く耳を持っているだけでなく、それを描写する能力がないとできない。
と思っていたら、この作者は「六本指のゴルトベルグ」の作者だったんだね。
なんか賞を取っていたはず。さもありなん。

ショパン・コンクールというとブーニンぐらいしか思い出せないわたしだが、中学時代に吹奏楽コンクールに出場したこともあり、音楽のコンクールがどんなものかというのは何となくわかる。
要するに「好み」なんだよね。ぶっちゃけて言うと。
ある程度技術的な部分をクリアできたあとは、どんな演奏が好きかという審査員の好みに左右されてしまうところがある。
それを作者も指摘していて、本来はショパンらしい演奏が評価されるべきなのだが、じゃあショパンらしい演奏って何?という基準が揺らいでいるというジレンマ。
本当に、音楽って難しいな。

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パトリック・ネス「怪物はささやく」

映画化されたことで興味を持ったのだが、結局映画の方は見なかった。
「パンズ・ラビリンス」を撮影した監督だというので、あの映画はトラウマになっているしなあ…。

コナーは母親と二人暮らしだが、母親は癌に冒されていて、気丈にふるまってみせるものの、ほとんど臥せっている状態。

それを知ってか知らずか、クラスメイトの一人がコナーをいじめはじめるが、なぜかコナーは全く抵抗しない。
それどころか、かばってくれた幼なじみを突き放すような言動を取る。
そんなある日、コナーのところに、「イチイの木」を名乗る怪物が現れる。
その怪物は、コナーに「3つの話を聞かせるから、4つめはお前が話せ」という。
そして語り出した物語は…。

原作は夭折した作家のアイデアを元にしているということだが、3つの物語部分がそうなのか、ちょっとよくわからなかった。
コナーの苦悩は少年には重荷かもしれないけど、それほど重罪ということでもないので、ちょっと拍子抜けかもしれない。
でも最後に自分の物語を語るところで涙なみだ。

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R.J.パラシオ「もうひとつのワンダー」

「ワンダー」というのは、顔に障害を持つオーガストという少年を軸に、彼の周辺の人たちの心情を描いた傑作児童小説なのだが、これはその続編というかスピンオフ。

前作はオーガストはもちろん、その姉とか姉の彼氏とか友人とかクラスメイトとかにフォーカスされていたが、今回はオーガストをいじめていたジュリアンという少年のほか、本作にはあまり登場しなかった三人が取り上げられている。
それぞれがオーガストの存在によって変わったり、変わらなかったりしている中で、ジュリアンの変化のしかたに涙が止まらない。
まあ、ぶっちゃけるとおばあちゃんの過去に関係するのだが、これを出されたら、ジュリアンも反省せざるをえないよな、という壮絶なエピソードが語られる。
この作者の偉いところは、勧善懲悪にしないところだな。
ジュリアンがオーガストをいじめるのには、それなりの理由があり、それを擁護するわけではないけれども、ちゃんと救済を用意してくれているところがスバラシイ。

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王城夕紀「天盆」

うーんうーん面白くないこともないのだが、いろいろ惜しい。

「天盆」という盤上ゲームでの勝者がすべての権力を握ることができる国で、一人の孤児がある夫婦に拾われる。
拾われた子供は「天盆」にちなんで「凡天」と名付けられ、その名に負けぬほど天盆好きの少年へと成長していく。
だが、貧しい飲食店の子でしかない彼が勝ち上がっていくにつれ、権力に目のくらんだ人間たちの策略に巻き込まれていくことになり…。

まず天盆というのが、完全に将棋なんだよね。
これがもうちょっとオリジナリティが混じっているゲームだったら素直にすごいと思えたんだが…、手駒を持てたり相手陣地に入ったら「成る」とか、まんますぎてちょっと興醒め。
それから、主人公たちが天盆に打ち込む様は清々しいのだが、その背後に起きている戦争の話がごちゃごちゃしていて、最後の展開がよくわからなかった。
戦争の方は勝ったの?負けたの?

「青の数学」もそうだったのだが、設定は面白いし、登場人物も魅力的なのだが、いろいろ内省的すぎて、周囲の状況がうやむやになってしまっているんだよね。
そこが惜しい感じ。

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