ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」

「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」に続く三部作の最後。
という触れ込みだったが、カミーユがとことん報われない。

パリの町中で、宝石店が襲われる事件が発生する。
犯人が出てきたところに鉢合わせし、暴行を受けて瀕死の状態になった女性は、実はカミーユの恋人だった。
カミーユは二人の関係を隠したまま、犯人を捕まえようとするのだが…。

前作でカミーユと独特な絆を築いていたアルマンが、冒頭で病死していることがわかって、ちょっと寂しい。
全体的に「アレックス」に比べると最後の衝撃がやや弱いが、それでも「そういうことだったの!?」とちょっとビックリする。
このままでは終わらない気もするが、どうなんだろう。

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黒川博行「喧嘩(すてごろ)」

安定の二宮&桑原シリーズ。
ストーリーはいつもかなり込み入っていて、今回も途中からよくわからなくなってきた。

学生時代の友人から、選挙で起きたいざこざを解決してほしいと頼まれた二宮。
ヤクザが絡んでいると知り、いやいやながらも桑原に伝手を頼んだのだが、選挙に立候補した政治家の裏を知り、それを使って大金を手にしようとたくらみはじめ…。

今回はシリーズの中ではわりと短い話だった。
もっと破天荒になってもいい感じだが、桑原がまたヤクザに復帰しそうなので、そうなったらまた派手にやらかしてくれるかもしれない。

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リチャード・アダムズ「ウォーターシップダウンのウサギたち」

「ザ・スタンド」でこの本に関する記述があり、ちょっと興味を持って読んでみた。
読んでみてビックリ。

とある丘に平和に暮らしていたウサギたちだが、ある日、預言者としての素質を持つファイバーが「早くここから出ていかないと大変なことになる」と告げる。
それを信じて群れを抜け出たのは、ヘイゼルをはじめとするウサギたち数匹だった。
ウサギにとってはあまりにも長い長い旅が始まった…。

なにがビックリしたといって、「冒険者たち」(ガンバの冒険)とあまりにもそっくりで。
絶対どっちかがどっちかをパクっている!と思った。

類似点その1、仲間たちがそれぞれの特性を生かして旅をするところ。
喧嘩っ早い仲間とか、頭がいい仲間とか、物語を語るのがうまい仲間とか…そっくり。

類似点その2、途中で別の群れと出会うのだが、彼らは人間に依存して生活していた…みたいなのが発覚するところ。
多少の犠牲者には目をつぶって、人間が与えてくれる食べ物で安穏と暮らしているフリをする。というのも両方にあった。

類似点その3、別の動物の助けを借りる。しかもどっちも鳥。これがかなり決定的。
鳥を助けることによって、最終的にはその手助けを得るというのも、まるっきりおんなじ。

ところが!さらにビックリしたことに、両方の作品がまったく同じ年に発行されているということが判明。つまり偶然の一致だというわけ。
1974年だったかな。
こういうのが流行る時代だったのか?
どっちもいい話だけどな。

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ジェフリー・ディーヴァー「煽動者」

もはやリンカーン・ライムシリーズはほとんど読んでないのだが、このキャサリン・ダンスシリーズは読んでいるのだった。

相手の心理をちょっとしたしぐさなどから分析するダンス。
しかし、とある証人が嘘をついていることを見逃してしまい、捜査から外されることに。
代わりに担当することになったのは、あるライブ会場で起きた火事事件だった。
最初は単なる事故と思われたのだが、誰かが意図的に会場をパニックに陥れたということに気付き、犯人を追い始める。

意外なことに、火事の犯人はけっこうあっさり捕まってしまい、なんだか拍子抜け。
ダンスが失敗した証人が絡んでいる事件の方が、実はどんでん返しだったのだった。
まあディーヴァーにどんでん返しは当たり前なので、これはこれでよかった。
それにしても、意図的にパニックを作るというのは怖いな。
遊園地で「テロが起きた」というデマを流して、みんながパニックになって出口に殺到したせいで、死人が出てしまうという。
本人は手を汚さずに犠牲者が出る。
ただ、これはちょっと誇張があるかもな。
人間には「正常性バイアス」というのがあって、何か事件とか事故とかがあっても「大したことはない」と自分を思い込ませてしまうらしいから。

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ピーター・トライアス「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」

う~ん…はっきり言って趣味じゃなかった。
ぜんぜん予想と違ったな。

太平洋戦争末期、アメリカで収容所に入れられていた日系人たちは、日本が戦争に勝利したことを知る。
日本は、アメリカを統治して、収容所で生き残った日系人たちの子孫が、天皇の名のもとに、逆らうものたちを一方的に始末していく、恐怖政治を行っていた。

日本が戦争に勝っていたらこうなるという、最悪のデストピアSF。
まあそれは別にどうでもいいのだが、とにかく拷問シーンが気持ち悪すぎる。
両手を毒アリに噛ませたりとか…もっとひどいのもあったな。
なんか表紙を見ると、日本がロボットを使って、世界を支配していく的な話かと思ったら、全然違ってた。
ロボット、どっかに出てたか?
ぜんぜん印象に残ってないが。

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スティーブン・キング「ザ・スタンド」

とにかく、最近は長編が読みたくてしょうがない。
一冊ずつ面白そうな本を探すのがめんどくさくなってきたというのもあるのだが。
じっくり読ませる話が欲しい。

ということで、「ザ・スタンド」全5巻を借りてみた。
長いことは長いんだが、1巻目がなかなか話が進まなくてイライラした。
どうも、最初はそこをカットしていたらしいんだが、そのあと完全版として出しなおしたらしい。
カット版でよかったんじゃ…。

とある研究所から、致死率99%という恐ろしいウイルスが漏れ出してしまう。
アメリカ国民は次々と罹患して死亡していき、生き残ったのはごくごくわずかな人間だけだった。
彼らは、「マザー・アビゲイル」の夢の導きに従って、次第に一か所に集まりはじめる。
だが同時に、彼らを狙う闇の男も存在したのだった。

1巻目はとにかく、ドミノ式に次々に感染していく様が描かれているだけ。
2巻からようやく話が動き出す感じ。中心人物も1巻ではよくわからない。
しかし逆に5巻では話が動きすぎてびっくり。
カタルシスっちゃあカタルシスだけどさあ…。
話が長い分、登場人物に感情移入もしているので、かなり哀しい終わり方。
まあ救いはあるけど。
それがキングのいいところだな。

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王城夕紀「青の数学」

数学×青春小説。
としか言いようがない。

数学に魅せられ、ひたすら数学に取り組み続ける栢山。
高校に入学し、周囲に影響されながら、「数学とは何か」「自分にとっての数学の意味」を考えはじめるようになる。
そんなある日、ネット上の数学バトルに誘われて…。

う~ん…1巻目はわりと面白かったんだが、2巻がね。
とにかく、数学バトルバトルバトル…。
バトルはいいんだが、どういう内容なのかが全く描かれていないので、「○○が勝った」「××が負けた」みたいなことになっていて、何が行われていたのか全然わからん。
ここをもうちょっと丁寧に書くべきじゃないのか?
もちろん、小難しい数式を並べても読者がついてこないと思ったんだろうが、それにしてももう少しチラ見せしてくれないと。
数学の成績が2の私には理解できないと思うが。

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道尾秀介「スタフ」

久しぶりに道尾秀介を読んだが、面白かった。
ストーリーも面白いのだが、細かい描写がツボにはまった。

ワゴンでデリを販売する仕事をしている夏都。
離婚したあと、海外で働く姉の息子と二人で生活をしている。
ある日、いつものようにデリの準備をしていると、保健所の人間と名乗る男がやってくる。
言われるがままに男についていくと、とある美少女の元に連れてこられる。
どうやら、少女は姉を脅している女と夏都を勘違いしているようで…。

けっこう話が入り組んでいるので、なかなか説明が難しいが。
一言でいうと、「みんなさびしい」という話かな。
さびしさゆえに犯してしまった過ちというか。
気持ちはわかるだけに、責める気にはなれない。
まあそれはそれとして、いろいろうまくいきすぎな感じはあるけど、それも持ち味か。

登場人物のキャラが濃いのだが、その描写がうまいのでくどくはない。
でも読むのにちょっと体力がいる感じかな。

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近藤史恵「シャルロットの憂鬱」

ジャーマンシェパードのシャルロットを中心とした、なんということもないミステリ短編集。
一応謎解き要素はあるのだが、それほどミステリっぽさはない。

不妊治療がうまくいかず、犬を飼うことにした真澄と浩輔の夫婦。
二人のもとにやってきたのは、警察犬をリタイアしたメスのジャーマンシェパードだった。
幸せな毎日を送っていたのだが、ある日家に空き巣が入るという事件が起こる。
いつもなら、不審者を見ると吠えるはずのシャルロットが、ベッドの下に隠れていたので、二人は不審に思い…。

こういう犬モノって、最後死ぬからイヤなんだよなあ。
「チェット」シリーズも、最初は死ぬところまでという話だったが、たぶん作者も殺すに殺せなくなったのか、なんとなくウヤムヤになっている。
これも、続編が出たら読みたいけど、死ぬのなら読みたくないわ。

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加納朋子「我ら荒野の七重奏」

いやー面白かった。
「七人の敵がいる」の続編にあたるのだが、吹奏楽あるあるにあふれていて、元吹奏楽部員としては笑うしかない。

息子の陽介が公立中学校の吹奏楽部に入部。
母親の陽子は、吹奏楽部員の親としてやるべきことがあまりにもたくさんあることに驚愕する。
定期演奏会の会場を取るために、二日前から交代で並ばなければならず、他にも生徒たちの引率やら何やら、陽子には理解しがたいことばかり。
だが、部活動に熱中する息子のために、できる限り協力したいと思うのだが…。

吹奏楽コンクールは、テレビ番組とかでも取り上げられてメジャーになっているので、これが出てくるのはわかるのだが、すごいのはアンサンブルコンテスト(アンコン)がかなりクローズアップされていること。
確かに、団体としてはパッとしない学校で、唯一全国大会に行けるチャンスがあるのはアンコンだからなあ。
でももちろん、アンコンにも選抜があって、上手い組といまいち組ができたりするあたりなんかもリアル。

あと、途中で顧問が交代になって、部活の指導方針が変わるというのも、心当たりがありすぎる…。
近所から騒音で苦情がきて、窓を閉め切って練習して、熱中症で倒れたりとか。

演奏会はうちの学校のときは体育館だったので、会場取りの経験はないが、準備がほとんど親がかりというのはそのまんま。
よく考えると、親がいないと部活動が成り立たないって、すごいよな…。
親には感謝せねば。

陽介が担当している楽器がファゴットだったので、ダブルリードあるあるもあって面白かった。
そうそう、リードを買いに行くには、得体のしれない雑居ビルの中のJDR(日本ダブルリード協会)つーところに行かないといけなかった。
そして、帰りにこっそり駅ビルでソフトクリームを食べるのが、ダブルリードパートの伝統だったのだよな。
懐かしい。

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