ジャッキー・ドノヴァン「サイモン、船に乗る」

軍艦に乗り込んで、朝鮮戦争に参加した実在の猫のお話。

だが、元ネタは実話だけれども、ストーリーはサイモン視点で進んでいるので、まあほとんどフィクション。
個人的には、フィクションよりもノンフィクションとしてちゃんといろんなエピソードを読みたかったのだが、たぶんそれほど細かいエピソードが残っていなかったので、こういうサイモンの一人称にしたんだろうな。
でも、一匹の猫の存在が、戦争に赴く若者たちの心を癒してくれていたというのが伝わってくる。
猫は偉大だな。
しかし、哀しいことに、帰還後にサイモンはあっという間に病死してしまうのだった。
戦争に行った猫としてすでに有名になっていたので、サイモンのお墓もちゃんとある。

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奥泉光「雪の階」

奥泉光の新作。だが、この人の小説は世界観がいろいろつながっているので、なんというか、登場人物が知っている人のような気がするんだよな。

伯爵家の娘である惟佐子は、親友の宇田川寿子が突然失踪した挙句、心中事件を起こしたことに衝撃を受ける。
旧知のカメラマンである千代子に真相究明を依頼するのだが、その一方で、惟佐子はとあるピアニストに接近されるようになる。その背後には、ある思想集団がいるようだったのだが…。

あーあらすじ書いても伝わらない。
とにかく、この惟佐子という少女の造形がすさまじい。
美しいのだが、頭は完全に理系で、自分の貞操を簡単に捨て去る。
だが、妙な憎めなさがあったりもする。
この惟佐子の周辺が、最終的には二二六事件へとつながっていくんだな、というのは予想ができるのだが、惟佐子自身がどうなるのか全然読めない。
一方で千代子はわかりやすくて、魅力的なので、千代子のパートは安心して読める。
この両者のバランスがさすがに上手い。

この世界観の果てはどこに行きつくんだろうなあ。

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二宮敦人「最後の秘境・東京藝大」

一時話題になった藝大の本。
これがなかなか構成がよく練られていて面白かった。

たぶん、小説家が書いたからこういう構成にできたんだろうなあ。
ただのノンフィクション作家とかだったら、もうちょっと単調な内容になったような気がする。

作者の奥さんは東京藝大の学生で、彫刻専攻なのだが、そのエキセントリックな行動に興味を持った作者は、もっとつわものがいるという藝大に取材することに。
前半は特殊な入学試験方法だとか、藝大を目指すために必要な資質みたいな話なのだが、段々と「芸術とは何か?」という話題になり、最後には東京藝大の音校と美校の調和みたいな感じで終わる。
芸術って、理解しがたいし、美しいばかりじゃないけど、やっぱり面白いな。
と思わせてくれる一冊。

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三浦しをん「ぐるぐる博物館」

三浦しをんの小説が最近あんまり好きじゃなくて、エッセイが読みたいなーと思っていたところに発見。
こんな本も出していたんだな。

要するに、全国の博物館ルポなんだけど。
ややマニアックな博物館ばっかりで、興味のある人には面白いかもしれないけど、縄文とか石とか、博物的な方面に興味がないとそれほど…という感じかも。
個人的には、石ノ森章太郎の記念館に行ってみたいと思った。

だって、エレベーターが「加速装置!」とか「きみはどこにおりたい?」とか言ってくれるらしいんだよ!
アニメの009ファンとしては外せないでしょう。

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藤岡陽子「闇から届く命」

読んでいるときは結構面白いなと思ったのだが、時間が経つと忘れてしまう…そんな内容。
助産師が主人公で、いろいろと問題を抱えている個人の産科病院を舞台に、小さい命を守ろうと助産師や医師が努力するのだが…。

というような。
しかし、途中でミステリー色が強くなって、作品のカラーとしては中途半端になってしまったかも。
でも、素直な筆致なので読みやすい。

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宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」

タイトルがすばらしくいい。
タイトルに惹かれて読んだと言っても過言ではなかったのだが…。

両親をテロで失い、アラルスタンという国の後宮に入ったナツキ。
後宮とは名ばかりの、少女のための教育機関だったそこで、ナツキたちは自分たちの夢に向かって勉学に励んでいたのだが、大統領が何者かに暗殺されてしまう。
ほとんど崩壊状態になった議会の代わりに、ナツキたち後宮の少女たちが、アラルスタンの政治を担おうと決意する。
だが、周辺国の様々な思惑に翻弄され…。

う~ん…まあファンタジーなんだよな。
アラルスタンという国も架空だし、後宮の少女が政治家になるというのもムリがあるし、暴力的手段を用いずに何とか混乱を収めようとするその手段も、かなり荒唐無稽だしなあ。
面白い人は面白いんだろうけど、ファンタジーでもなくリアルでもなく、どっちつかずな感じでちょっとわたしには受け入れにくかった。
ご都合主義すぎるところがあるせいかもな。
もうちょっと、悲劇は悲劇としてちゃんと描いてくれれば、ナツキたちの正義ももっと活かされるのになあ。

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宮部みゆき「あやかし草紙」

三島屋怪異譚シリーズ。
正直いって、前作で青野さまが退場してしまってから、以前ほど興味はわかなかったのだが、ストーリーは面白いので読む。
う~ん。
以下ネタばれ。

前作でぽっと出てきた貸本屋が、結局のところおちかと結ばれるんだけど、そのなりゆきがあまりにも唐突というか、無理やりというか。
青野さまとはあんなに少しずつ距離を縮めていたというのに…。
最後の最後まで、この貸本屋の正体がよくわからないままなので、おちかはどこがよかったのか理解しがたい。

まあ、妖怪話の伏線みたいな部分なので、どうでもいいのかもしれないけどさ。

そんで次回からはおちかの従兄が聞き役として登場する。
この従兄も悪い人間じゃないんだけど、ちょっと軽すぎるのがなあ。
聞き役に徹することができるのか不安が残るわ。
そんで、また色気づいたりしてめんどくさいことになりそうだし。

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マイケル・ロボサム「生か、死か」

とある囚人が、刑期が明けるという前日に脱獄。
彼は数百万ドルを強奪した犯人と思われており、その金の行方を誰にも明かそうとしなかった。
彼と金を探すべく、様々な人間たちが動きだすのだが…。

久しぶりに心から面白いと思った。
なぜ、解放される前日に脱獄しなければならなかったのかが、終盤になって判明すると、そうだったのか~と唸らざるを得ない。
前半では意味不明だった行動にも、彼なりの信念があったことがわかる。
これはよく出来ている話だわ。

途中で彼と出会ってしまったがために、無残に殺されてしまった母娘が一番可哀そうだったな。
でも、そういう部分で妥協しないというのもこの作品の凄味だと思う。

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フランク・ハーバート「デューン砂の惑星」

とにかく、SFの長編が読みたくて手を出した。
うーん…確かにSFの傑作と呼ばれるだけのことはある、重厚なSF小説。

権力争いに破れ、父親を殺されたポールは、砂の惑星と呼ばれる星に住む原住民を味方につけ、復讐の時を待つ。
だが、この星の麻薬の影響で、ポールには常人にはない能力が備えられつつあった。

ストーリーは、わりとよくある復讐劇。
「氷と炎の歌」のシリーズになんか似ているものを感じた。
ヨーロッパの王位簒奪の物語の定石みたいなものかなあ。
しかし特筆すべきは、この星の生態描写の細かさ。なんか「生態SF」みたいな呼び方をされているらしい。
さもありなん、というぐらいに緻密な設定。
緻密すぎて、用語が段々ワケわからなくなってくるのが難だが…、本格SFが好きな人にはたまらないだろうな。

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白川紺子「契約結婚はじめました」

最近こういう、はてしなくライトな小説ばっかり読んでいる。
重たい小説が読めないからだになりつつある…。

よくないなあ。

こちらは、タイトル通り、お互いに利害が一致したという理由で契約結婚をしている、27歳の旦那様と十九歳の若妻のお話。
一応日常の謎を解くようなストーリーにはなっているけど、主眼はこの二人のもだもだ恋愛模様だろうな。
契約結婚であるがゆえに、お互いに一歩踏み出せない2人が、これからどうなるのかが楽しみ。
ただ、旦那様の弟はうざい。こいつのエピソードはちょっとつくられた感じがありすぎて、好きになれないなあ。

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