宮内悠介「あとは野となれ大和撫子」

タイトルがすばらしくいい。
タイトルに惹かれて読んだと言っても過言ではなかったのだが…。

両親をテロで失い、アラルスタンという国の後宮に入ったナツキ。
後宮とは名ばかりの、少女のための教育機関だったそこで、ナツキたちは自分たちの夢に向かって勉学に励んでいたのだが、大統領が何者かに暗殺されてしまう。
ほとんど崩壊状態になった議会の代わりに、ナツキたち後宮の少女たちが、アラルスタンの政治を担おうと決意する。
だが、周辺国の様々な思惑に翻弄され…。

う~ん…まあファンタジーなんだよな。
アラルスタンという国も架空だし、後宮の少女が政治家になるというのもムリがあるし、暴力的手段を用いずに何とか混乱を収めようとするその手段も、かなり荒唐無稽だしなあ。
面白い人は面白いんだろうけど、ファンタジーでもなくリアルでもなく、どっちつかずな感じでちょっとわたしには受け入れにくかった。
ご都合主義すぎるところがあるせいかもな。
もうちょっと、悲劇は悲劇としてちゃんと描いてくれれば、ナツキたちの正義ももっと活かされるのになあ。

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宮部みゆき「あやかし草紙」

三島屋怪異譚シリーズ。
正直いって、前作で青野さまが退場してしまってから、以前ほど興味はわかなかったのだが、ストーリーは面白いので読む。
う~ん。
以下ネタばれ。

前作でぽっと出てきた貸本屋が、結局のところおちかと結ばれるんだけど、そのなりゆきがあまりにも唐突というか、無理やりというか。
青野さまとはあんなに少しずつ距離を縮めていたというのに…。
最後の最後まで、この貸本屋の正体がよくわからないままなので、おちかはどこがよかったのか理解しがたい。

まあ、妖怪話の伏線みたいな部分なので、どうでもいいのかもしれないけどさ。

そんで次回からはおちかの従兄が聞き役として登場する。
この従兄も悪い人間じゃないんだけど、ちょっと軽すぎるのがなあ。
聞き役に徹することができるのか不安が残るわ。
そんで、また色気づいたりしてめんどくさいことになりそうだし。

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マイケル・ロボサム「生か、死か」

とある囚人が、刑期が明けるという前日に脱獄。
彼は数百万ドルを強奪した犯人と思われており、その金の行方を誰にも明かそうとしなかった。
彼と金を探すべく、様々な人間たちが動きだすのだが…。

久しぶりに心から面白いと思った。
なぜ、解放される前日に脱獄しなければならなかったのかが、終盤になって判明すると、そうだったのか~と唸らざるを得ない。
前半では意味不明だった行動にも、彼なりの信念があったことがわかる。
これはよく出来ている話だわ。

途中で彼と出会ってしまったがために、無残に殺されてしまった母娘が一番可哀そうだったな。
でも、そういう部分で妥協しないというのもこの作品の凄味だと思う。

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フランク・ハーバート「デューン砂の惑星」

とにかく、SFの長編が読みたくて手を出した。
うーん…確かにSFの傑作と呼ばれるだけのことはある、重厚なSF小説。

権力争いに破れ、父親を殺されたポールは、砂の惑星と呼ばれる星に住む原住民を味方につけ、復讐の時を待つ。
だが、この星の麻薬の影響で、ポールには常人にはない能力が備えられつつあった。

ストーリーは、わりとよくある復讐劇。
「氷と炎の歌」のシリーズになんか似ているものを感じた。
ヨーロッパの王位簒奪の物語の定石みたいなものかなあ。
しかし特筆すべきは、この星の生態描写の細かさ。なんか「生態SF」みたいな呼び方をされているらしい。
さもありなん、というぐらいに緻密な設定。
緻密すぎて、用語が段々ワケわからなくなってくるのが難だが…、本格SFが好きな人にはたまらないだろうな。

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白川紺子「契約結婚はじめました」

最近こういう、はてしなくライトな小説ばっかり読んでいる。
重たい小説が読めないからだになりつつある…。

よくないなあ。

こちらは、タイトル通り、お互いに利害が一致したという理由で契約結婚をしている、27歳の旦那様と十九歳の若妻のお話。
一応日常の謎を解くようなストーリーにはなっているけど、主眼はこの二人のもだもだ恋愛模様だろうな。
契約結婚であるがゆえに、お互いに一歩踏み出せない2人が、これからどうなるのかが楽しみ。
ただ、旦那様の弟はうざい。こいつのエピソードはちょっとつくられた感じがありすぎて、好きになれないなあ。

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ゆきた志旗「Bの戦場」

ラノベと普通の小説の中間ぐらいの、ちょっとライトな小説。
しかしこれの何がすごいって、主人公が「B(ブス)」だということ。
それはもう、取り繕いようがなく、メガネをはずしたら実は…みたいな生ぬるい設定ではなく、顔を観た人が思わず絶句するぐらいのB。
だが、そんな彼女は自分には不可能と思われる結婚を夢見て、ウェディングプランナーとして働くことを決意。
日々、様々なお客様たちのニーズにこたえるべく、誠意をもって対応するのだった。
だが、そんな彼女に超絶美形でしかも「B専」という上司が現れる…。

しかし、たぶん小説史上で一番のBだろうな、この主人公は。
それなりに恋愛沙汰もあるんだけど、その相手は「B専」だというから徹底している。
でもただ、「B」というのがただのネタではなく、外見と内面のコンプレックスの問題とかに、きちんと切りこんでいるところがスゴイ。
特に胸を打たれたのは、3巻の名前の話。

あー…こういうことはありそうだわ…。
おためごかしとか、ご都合主義とかではなく、「誠意」で切り抜ける主人公が清々しい。

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マーク・グリーニー「暗殺者の飛躍」

ああ~恐れていたことが…。

いや、面白かったんだよ?面白かったんだけど…。

CIAからの極秘の指令を受けて香港へと向かったジェントリー。
そこで待ち受けていたのは、ロシアの女スパイで…。

ということで、女が登場ですよ…。
まあ、あのCIAの野心丸出しの女じゃなくて、もっとストイックな女スパイだったのが救いといえば救いだけど。
やっぱりジェントリーは孤独なのがいいんだよ!
一人で孤独に戦っているときが一番かっこいい!
誰にも正体がばれずに、時にかっこ悪く生き抜くところがかっこよかったのに!
あーあー。
アメリカではさらに続編が出ているので、楽しみなような、怖いような。

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松岡圭祐「黄砂の籠城」

歴史上、実際にあった義和団事件を当事者の視線から描いた歴史小説。
しかし…。
う~ん…どうにもこうにも、「日本すごい!」「日本人さすが!」みたいな匂いがしていて、ちょっと読んでいてつらかった。
もうちょっと客観的に書けなかったのかなー…と思ったら、そのあと義和団の当事者目線の続編が出ていたらしい。
そちらも合わせて読んだら見る目が変わるかも。

両方を合本した文庫が出ているらしいので、また興味が出てきたら読もう。

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原寮「それまでの明日」

14年ぶりの新作ということで、めちゃくちゃ楽しみにしていたのだが。
う~ん…。

沢崎のもとに、とある紳士が依頼に来る。
依頼の内容は、ある料亭の女将のことを調べて欲しいというものだった。
ところが、その依頼に取り掛かろうとしている沢崎は、銀行強盗に遭遇してしまう。
その事件の場所となったのは、依頼人が支配人を務めている金融機関だったのだが…。

銀行強盗の下りは面白かった。
ちょっと伊坂幸太郎っぽくて。
でもその後がなあ。
沢崎につきまとう青年がいろいろ邪魔で、なんだか事件がボンヤリしてしまった感じ。
最後まで読むと「そういうことかあ」と納得はするのだが。
もうちょっと事件そのものが盛り上がってもよかったような。
あんまり沢崎が活躍する場面がなくて、単なる謎解きで終わってしまったのが残念。
まあみんなも年をとるしな。

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伊坂幸太郎「AX」

あ~、いかにも伊坂幸太郎らしい伊坂幸太郎作品。

登場人物も、「兜」というあだ名をもつ暗殺者だし。
「マリアビートル」とか、あの系統の話だね。
ただ、最後の展開が急すぎてかなりびっくり。
最初、何が起こったのかわからなくて、何度も読み返してしまった。
決してハッピーエンドじゃないんだけど、それでもハッピーエンドにしてしまう、それがいかにも伊坂幸太郎らしい。
楽しめた。

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