朝霧カフカ「ギルドレ」

「文豪ストレイドッグス」の原作者が書いたというのを後から知ったのだが、「文豪」のコミックスはいまいち乗れなかったものの、こちらは見事にはまってしまった。

記憶を失った少年カイルは、この世界が異星人によって滅ぼされつつあることを知る。
しかし、彼が危機的状況に陥ったとき、奇跡的な能力が発揮される。
それは「あらゆる可能性の中から、自分が望む可能性を選び取る」という、神にも等しい能力だった。
異能ゆえに保護観察下に置かれることになったカイルは、ギルドレ(ギルティチルドレン)と呼ばれる、異星人と戦うためだけに存在する少年少女たちを行動を共にすることになる。

カイルの能力は量子力学的に説明されてはいたものの、まあいわばチートというやつだよね。
ただ面白いのは、起こり得る可能性の中から選ぶことができるだけで、死んだ人をよみがえらせるとか地球を逆回転させるとか、起こりえないことは選択できないというところ。
そのせいで、いろんな奇跡や悲劇が起こることになるので、これからの展開が楽しみなのだが、続きが出る前にアニメ化とかされそうだな。

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柚木朝子「幹事のアッコちゃん」

相変わらずのアッコちゃんシリーズなのだが、今回はちょっと毛色の違う短編が混じっていた。
アッコが経営している会社のゴシップ記事を書くために、取材に訪れた温子。

実は彼女はアッコちゃんの熱烈な信奉者であり、彼女をまねてワゴン販売などに手を染めた過去があった。
しかし、ことごとく失敗してしまったことで、いまではアッコちゃんに劣等感を抱いていた。
ところが、取材に訪れたアッコちゃんの、意外に弱い一面を垣間見て…。

アッコちゃんが決してスーパーウーマンなどではなく、あくまでも悩んだり苦しんだりもする一人の女性だということがわかってしんみりする。
というか、このシリーズはそもそも、アッコちゃんのアドバイスによってすべてがうまく回り出すという、ある意味ご都合主義的な部分があって、それがいいところでもあったんだが、そうそう現実はうまくいかないよ、と作者自身が自分を戒めている感じがあって面白かった。

しかし、アッコちゃんが毎日なにかしら習い事をしているというのにはちょっと心を動かされた。
時間は有限だし、やりたいことをやらないともったいないのよね…。

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今野敏「去就」

楽しみにしていた、隠蔽捜査最新刊。
段々、竜崎のキャラクターに周囲が慣れてきてしまっているので、ハラハラ度が減っているが、面白さは変わらない。

竜崎が署長を務める大森署の管内で、ストーカーによるものと思われる殺人事件が発生。
殺されたのは、ストーカー被害にあっていた女性の知人で、女性は犯人と思しき男に連れ去られてしまう。
竜崎たちは犯人の足取りを追うのだが、事件は意外な展開を見せる。

事件そのものはわりと展開が読める感じで、それほど意外性はなかったのだが、事件の後で、このタイトルの真意がわかる。
「去就」ってそういうことだったのかー。
まあ異動が多いという警察で、いつまでも大森署の署長でいられるわけもないんだけど、戸高とのやりとりとか、すでにおなじみになっているメンバーもいるので、あんまり簡単に異動させないでほしいわ。

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宮部みゆき「悲嘆の門」

予備知識ゼロで読み始めたのだが、こういう内容だったか…。

クマーという、ネットパトロールを行う会社でアルバイトをしている孝太郎。
指を切断するという連続殺人事件が起きているなか、街のビルにあるガーゴイルの像が動いているという奇妙な現象が起こる。
そして、クマーで孝太郎とともに働いていた青年の失踪。
不可思議な事件の裏には、思いもよらない「異世界」の存在があった。

まー要するに、事件の真相を異世界の力を使って知る、という内容。
孝太郎は段々、その異世界の力に頼りすぎるようになって、人間としての本性を失ってしまう。
う~ん…今までも何度か書いたが、宮部みゆきのファンタジーは苦手なのよ…。
今回も、「言葉が実在となる世界」みたいなものが出てくるのだが、その世界観の設定が難しすぎてよくわからない。
わかるのは、孝太郎がちょっと若気の至りすぎるということ。
正義感にあふれているからこそ、しっぺ返しも大きい。
あまりにも青臭くて、ちょっと直視できないんだよなあ。

もしかして、この世界観で続編を書くつもりなのだろうか…。
いろんな登場人物が出てくるのだが、結構中途半端な存在だったりするし。

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石井光太「鬼畜の家」

誰でも新聞で目にしたことのある、親による子殺しの事件を追いかけたルポルタージュ。
あの有名な事件の背景にはこんなことがあるのか…とやるせなくなる。
要するに、子供を殺しても平然としているような親は、自分もそういう親に育てられているという、負の連鎖だったのだな。
しかも、その犯人が住んでいるところが、うちのすぐ近所なんだよな。
まあ治安のいい場所ではないとはわかっていたけど、ここまで「場末感」たっぷりに書かれるとフクザツな気分。
普通に住んでいると、そこまでひどい場所じゃないんだけどな。

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ピエール・ルメートル「傷だらけのカミーユ」

「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」に続く三部作の最後。
という触れ込みだったが、カミーユがとことん報われない。

パリの町中で、宝石店が襲われる事件が発生する。
犯人が出てきたところに鉢合わせし、暴行を受けて瀕死の状態になった女性は、実はカミーユの恋人だった。
カミーユは二人の関係を隠したまま、犯人を捕まえようとするのだが…。

前作でカミーユと独特な絆を築いていたアルマンが、冒頭で病死していることがわかって、ちょっと寂しい。
全体的に「アレックス」に比べると最後の衝撃がやや弱いが、それでも「そういうことだったの!?」とちょっとビックリする。
このままでは終わらない気もするが、どうなんだろう。

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黒川博行「喧嘩(すてごろ)」

安定の二宮&桑原シリーズ。
ストーリーはいつもかなり込み入っていて、今回も途中からよくわからなくなってきた。

学生時代の友人から、選挙で起きたいざこざを解決してほしいと頼まれた二宮。
ヤクザが絡んでいると知り、いやいやながらも桑原に伝手を頼んだのだが、選挙に立候補した政治家の裏を知り、それを使って大金を手にしようとたくらみはじめ…。

今回はシリーズの中ではわりと短い話だった。
もっと破天荒になってもいい感じだが、桑原がまたヤクザに復帰しそうなので、そうなったらまた派手にやらかしてくれるかもしれない。

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リチャード・アダムズ「ウォーターシップダウンのウサギたち」

「ザ・スタンド」でこの本に関する記述があり、ちょっと興味を持って読んでみた。
読んでみてビックリ。

とある丘に平和に暮らしていたウサギたちだが、ある日、預言者としての素質を持つファイバーが「早くここから出ていかないと大変なことになる」と告げる。
それを信じて群れを抜け出たのは、ヘイゼルをはじめとするウサギたち数匹だった。
ウサギにとってはあまりにも長い長い旅が始まった…。

なにがビックリしたといって、「冒険者たち」(ガンバの冒険)とあまりにもそっくりで。
絶対どっちかがどっちかをパクっている!と思った。

類似点その1、仲間たちがそれぞれの特性を生かして旅をするところ。
喧嘩っ早い仲間とか、頭がいい仲間とか、物語を語るのがうまい仲間とか…そっくり。

類似点その2、途中で別の群れと出会うのだが、彼らは人間に依存して生活していた…みたいなのが発覚するところ。
多少の犠牲者には目をつぶって、人間が与えてくれる食べ物で安穏と暮らしているフリをする。というのも両方にあった。

類似点その3、別の動物の助けを借りる。しかもどっちも鳥。これがかなり決定的。
鳥を助けることによって、最終的にはその手助けを得るというのも、まるっきりおんなじ。

ところが!さらにビックリしたことに、両方の作品がまったく同じ年に発行されているということが判明。つまり偶然の一致だというわけ。
1974年だったかな。
こういうのが流行る時代だったのか?
どっちもいい話だけどな。

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ジェフリー・ディーヴァー「煽動者」

もはやリンカーン・ライムシリーズはほとんど読んでないのだが、このキャサリン・ダンスシリーズは読んでいるのだった。

相手の心理をちょっとしたしぐさなどから分析するダンス。
しかし、とある証人が嘘をついていることを見逃してしまい、捜査から外されることに。
代わりに担当することになったのは、あるライブ会場で起きた火事事件だった。
最初は単なる事故と思われたのだが、誰かが意図的に会場をパニックに陥れたということに気付き、犯人を追い始める。

意外なことに、火事の犯人はけっこうあっさり捕まってしまい、なんだか拍子抜け。
ダンスが失敗した証人が絡んでいる事件の方が、実はどんでん返しだったのだった。
まあディーヴァーにどんでん返しは当たり前なので、これはこれでよかった。
それにしても、意図的にパニックを作るというのは怖いな。
遊園地で「テロが起きた」というデマを流して、みんながパニックになって出口に殺到したせいで、死人が出てしまうという。
本人は手を汚さずに犠牲者が出る。
ただ、これはちょっと誇張があるかもな。
人間には「正常性バイアス」というのがあって、何か事件とか事故とかがあっても「大したことはない」と自分を思い込ませてしまうらしいから。

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ピーター・トライアス「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」

う~ん…はっきり言って趣味じゃなかった。
ぜんぜん予想と違ったな。

太平洋戦争末期、アメリカで収容所に入れられていた日系人たちは、日本が戦争に勝利したことを知る。
日本は、アメリカを統治して、収容所で生き残った日系人たちの子孫が、天皇の名のもとに、逆らうものたちを一方的に始末していく、恐怖政治を行っていた。

日本が戦争に勝っていたらこうなるという、最悪のデストピアSF。
まあそれは別にどうでもいいのだが、とにかく拷問シーンが気持ち悪すぎる。
両手を毒アリに噛ませたりとか…もっとひどいのもあったな。
なんか表紙を見ると、日本がロボットを使って、世界を支配していく的な話かと思ったら、全然違ってた。
ロボット、どっかに出てたか?
ぜんぜん印象に残ってないが。

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